Session3

(1) 谷垣 君龍「My learnings from El Camino de Santiago」(15:35)

プロフィール詳細
上には上がいることを知った中学受験により、自分に限界を決めるようになってしまったと語る谷垣くん。そんな生活を抜け出そうと、15歳の夏、カミーノ巡礼に、一人で旅立ちました。そこで得た大きな気づきとは…。

挫折から始まったという中学生活。それでも楽しく、居心地の良い日常だったと言います。でもここで、わざと居心地の悪い非日常を体験することで、何かが変わるのではないかと、800キロの巡礼道に挑戦します。

共に歩く人たちとは、お互い言葉が通じず、会話も成立しないけれど、心で深くつながりを感じたと言います。そして、ひたすら歩く非日常空間の中で、対話(つながり)の大切さを学んだと…。

自分たちに必要なのは「きっかけ・場の共有・対話(つながり)」だと気づいた谷垣くん。さっそくこのキーワードを基に、学校・大企業を巻き込み、大きなイベント「スパプレ」を企画したそうです。(その後、大成功を収めたと本人より報告を受けました。)

目の前の道からゴールは見えなくとも、どのように歩くかで、ゴールの捉え方は変わってくる、と力強く訴えます。会場の子どもたちも、自分の前に伸びる未来への道、その先にあるゴールは自分次第だという希望を、谷垣くんから得たことでしょう。


(2) 綾屋 沙月「Doing research on myself as a researcher and a person with ASD」(20:42)

発達障害者当事者研究者(プロフィール詳細
幼稚園入園当初から、友だちが遊ぶ様子を見ては『自分は何か違う、ガラスの壁があり、中に入れない』と感じていたという綾屋さん。時にガラスの壁が突然なくなり衝撃を抱くことも。そんな綾屋さんは現在、当事者研究者として自分自身について研究されています。

周囲はまるで水面の反射のようにキラキラしていて美しく、とても羨ましい、でも私は水底にいて届かない…、私はいったい何者なの?他の人と何が違うの?答えの出ない悩みを書き続けたノートは数十冊にもおよぶそうです。

2005年『アスペルガー症候群』『自閉症スペクトラム』の診断を受けたことで、それまで断片化していた記憶が統合され、自分が何者かが少し分かったと言います。しかしそれだけでは社会とのコミュニケーションは解決されず、『当事者研究』に進まれました。

綾屋さんの研究により、『自分が何者か分からない、人との関係においてトラブルを抱えている』という人に水面の反射のようなキラキラした光がさすことを多くの人が願ったことでしょう。


(3) 内藤 朝雄「What you’ll see from bullying」(20:12)

社会学者(プロフィール詳細
人類は進化の中で遺伝子に残虐性を埋め込んできました…と社会学者の内藤さんは話します。私たち人間は群れの中では潜在的に怪物になってしまうこともあるという事実に会場の空気が緊張に包まれました。しかし、「いじめ」を社会学的に観察・分析することで、人類の歴史を優しいものに変えることができるかもしれないとも。そんな明るい未来を私たちは望まずにはいられません。

日本の学校でおこっている「いじめ問題」は、学校が社会から断絶された閉鎖空間にあること、善悪の基準が独自の群れの秩序にるより成り立っていること、これらが社会の秩序に比べ圧倒的に優勢になっていることにあると「いじめ観察」から分かったそうです。この閉鎖的で狭い群れの中で過ごす子どもたちに、私たち親(大人)ができることは何なのか…?内藤さんの言葉にある『人間の尊厳を最高価値とする社会の秩序』を学校と融合させること…そう感じた人も多いのではないでしょうか。


(4) ジュリア・カセム「Design Can Empower」(18:23)

英国王立芸術大学院ヘレンハムリン研究所 シニアリサーチフェロー(プロフィール詳細
2ヶ国、20都市、700人以上のデザイナーが参画するInclusive Design Challenge Workshop ProgramをプロデュースしているJuliaさん。インクルーシブ・デザインは、人を中心に置いたデザインプロセスであり、障がいや年齢など、人それぞれの多様性や相違を理解することが重要であるとを語ってくれました。

キーパッド(タイプライター)やウォシュレット・トイレは、どちらも普段私たちが目にするものですが、元々は障がい者や医療用として作られた物だと、どれだけの人が知っていたでしょうか。ハンディキャップを補うために開発されたものが今、私たちが普通に使っているものとして存在する。つまり、インクルーシブ・デザインは、不可能と思える状況を変革させることができる「tool」であると位置づけられています。

ボスニアやマケドニアで聴覚障がい者の自立支援に従事し、ワークショップを手掛けるJuliaさん。異なる訓練を受けてきた人々の協同プロセスにおいて、デザインはより良くなると確信されています。

普段、便利なものに囲まれているこの社会の中で、「Inclusive(包括的)」とはどういうことか、人々の多様性に着目したデザインから何が生み出されるか…改めて考えた人も多いのではないでしょうか。



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